愛はきらめきの中に
                              〜HOW DEEP IS YOUR LOVE〜

                                                         作:林田流香

 

         “ピンポーン”

            「はい」

            「よぉっ」

         ドアを開けると立っていたのは、私の幼なじみの甲斐だった。

         小学校からずっと一緒で高校は別々だったけど、甲斐の友達とみんなでよく遊んでた。

         でも・・・・私は甲斐には何も告げず姿を消した。

            「甲斐・・・・何でここ・・・・」

            「ホンマ冷てぇな、いきなり姿消して連絡もなしやなんて」

            「あ・・・・どーぞ」

            「おまえのおふくろさんから聞いたんよ、ここで一人暮らししとるよって」

         お母さん甲斐に教えちゃったんだ・・・・内緒って言ったのに・・・・。

            「元気そうだね」

            「まーな」

         甲斐が私をじっと見る・・・・何だか言葉が出てこない。

            「2年ぶりや・・・・な」

            「ん・・・・」

         “トゥルルル・・・・”

         会話を電話のベルがさえぎった。

            「はい藤木です」

            『あ、俺・・・・昨日はごめん・・・・今日、逢えないかな』

            「ごめんなさい・・・・今日はちょっと・・・・」

            『そっか・・・・またかけるよ』

            「ん・・・・」

         受話器を置く。

            「彼氏?」

            「・・・・かな・・・・」

            「かな・・・・って・・・・知宏とは連絡とってへんのか?」

            「ん・・・・とってない。甲斐は?」

            「アイツ、今北海道におるんよ」

            「北海道・・・・か」

            「何で・・・・断ったんや?」

            「・・・・幼なじみって損よね。甲斐の口から聞きたくない言葉聞いちゃっても・・・・次の日には笑って

             おはようって言わなきゃいけないんだもん・・・・甲斐・・・・私のあの時の気持ちなんて知らないでしょ?

             ・・・・自分の好きな人に“アイツがお前のこと好きなんだって”なんて言われたら、どうしていいのか

             わかんないよ・・・・」

            「それで・・・・ここに・・・・?」

            「ん・・・・」

         甲斐への気持ちはとっくにふっきれてるはずだった。

            「安心して。甲斐のことなんて、もうなーんとも思ってないから」

            「彼氏居るんやったら安心やな」

         彼と写ってる写真たてを見る・・・・やばいっ、バレたかな・・・・写真の彼の薬指の指輪。

            「菜花、おまえ・・・・」

            「いっ・・いいじゃないっ・・・・私がどんな人とつきあったって、甲斐には関係ないでしょ!」

            「おまえ自分がやっとることがどーゆーこっちゃわかっとんのか!?」

            「わかってるよっ!けど、この人は甲斐みたいに無神経なこと言わないし、私のこと大切にしてくれて

             るもんっ!」

            「コイツがおまえを幸せにできる保障があるんか、人様のもんやぞ?!」

            「わかってるよっ・・・・」

            「ここ何遍か菜花を見かけたんや・・・・コイツと一緒に街を歩いてたり・・・・先週の土曜日、何やっと

             ったんや?」

            「えっ?」

         先週の土曜日・・・・映画の約束してて、子供との約束かなんかでキャンセルされた日だ・・・・

            「映画館の前で3時間、誰を待ってたんや?結局来なかったんやろ?それでも大切にされてるって

             思っとるんか?」

            「おっ・・・・大きなお世話よっ!!」

         甲斐の言ってることが正しいのは分かってるのに・・・・こんな言い方しかできないなんて

            「勝手にしろやっ」

         “バタンッ”

         何だか嫌な再会になっちゃったな。

         忘れようとしてた2年間が更に気持ちを大きくしてたなんて。

 

         次の日の昼休みの公園。

            「何?話って」

            「来週の約束なんだけどさ・・・・」

            「駄目になっちゃった?」

            「ん・・・・子供を遊園地に連れてかなきゃいけなくなちゃって・・・・ごめんな」

            「んーん」

         とは言ったけど・・・・何だか疲れちゃった。

         今日は実家に帰ろう。

            「ただいまー」

            「あら、めずらしい。電話くれればご飯残しといたのに、片付けちゃったわよ」

            「あーいいよ。食べてきたから」

         あの頃と全く変わってない私の部屋。

         向かいの部屋の電気がついた。

         あの頃のままなら・・・・あそこは甲斐の部屋・・・・帰ってきたのかな。

         “コツン”

         窓ガラスに何かがあたった・・・・窓を開ける。

            「・・・・甲斐・・・・」

            「帰ってたんか」

            「ん、お母さんに甘えたくなっちゃって」

            「何かあったんか?」

            「・・・・何もないよ・・・・」

            「アイツとはうまくいっとんのか?」

            「・・・・ん・・・・何か疲れちゃった・・・・やっぱりさ、私は2番目で1番にはなれないんだよね。

             ずっと待ってるだけで・・・・」

            「わかっててつきあってたんやろ?」

            「まーね・・・・」

            「ちょっとは、目覚めたか?」

            「ん、ごめんねこの前は・・・・私・・・・」

            「何や?」

            「んーん、何でもない・・・・甲斐は彼女いないの?」

            「俺は・・・・ずっと片想い」

            「そっか」

            「どーするんや?またアイツんとこ戻るんやろ?」

            「・・・・わかんない・・・・私」

            「ん?」

            「ごめん・・・・私・・・・もう甲斐と会うのやめる・・・・じゃないとまた・・・・昔みたいになっちゃう」

            「菜花」

            「彼とも・・・・別れる。決心ついたから・・・・おやすみっ」

         それだけ言うのが精一杯で窓を閉めた。

            「菜花!菜花!」

         甲斐が窓を叩いてる・・・・しばらくすると静かになった、諦めたのかな。

         “pipipi”

         携帯・・・・?

            「・・・・はい・・・・」

            『都合が悪うなると逃げ出すクセ昔から変わってへんなー、一方的にアレだけ言われたら、

             何も返事できへんって・・・・何でぶつかれへんの?』

            「かっ・・・・甲斐・・・・」

            『じゃあな』

         それだけを言うためにわざわざ携帯を鳴らしたの・・・・?

 

         次の日の屋上。

            「珍しいな。菜花から電話してくるなんて」

            「ん、話があるの」

            「何だよ」

            「私・・・・気になる人がいるの・・・・あなたといてもその人のこと考えちゃう・・・・」

            「菜花、あと1年、あと1年待ってくれないか?・・・・妻とは別れる。だから・・・・」

            「もう、待ちたくない・・・・」

            「ちょっと待てよ」

            「じゃ、次の約束の日一緒にいてくれるの?!」

            「それは・・・・」

            「ちゃんと家族に戻って・・・・その方がお互いのためにいいと思う・・・・ごめんなさい」

            「菜花!!」

         “バタンッ”

         彼が叫んでいる声にかまわず屋上のドアを閉める。

         何だか涙が止まらない・・・・自分から別れ話をしておいて泣いてるなんて・・・・でも・・・・これでいいんだ・・・・

         これで・・・・

         長い一日が終わった。

         会社を出て歩き出すと前から向かってくる人影に気がついた。

            「菜花」

            「・・・・甲斐・・・・?」

            「今終わったんか?」

            「ん・・・・」

            「今日は一緒じゃないんやな」

            「・・・・もう、会わない・・・・」

            「何無理しとんねん。好きなんやろ?」

            「・・・・無理してないよ・・・・何か、スッキリしたもん・・・・もう、待つのは嫌なの・・・・」

            「そっか」

            「甲斐、何でここにいるの?」

            「ただ、通りかかっただけや」

            「嘘だ。まーた、私に会いたくなっちゃったんでしょー」

            「そーや、おまえに会いとうて会社の前で待ってたんや」

            「えっ・・・・」

         甲斐が、私の反応を楽しむかのように茶色い髪の隙間から私の様子を見ている。

         くやしいけど私は動揺を隠せない。

            「冗談やて」

         ちょっと笑って私を見る。

            「信じらんない・・・・」

            「アイツに、何て言ったんや?」

            「えっ?」

            「おまえから言うたんやろ?別れたいって」

            「1年待ってくれたら奥さんと別れるって・・・・でも、そんなことできるわけないもん・・・・だから

             いいの、大丈夫」

            「随分成長したもんやなぁ」

            「まーね。ね、聞いてもいい?」

            「何やねん」

            「何で私のこと探したの?」

            「退屈やったから」

            「それだけ?」

            「隣の窓叩いて反応があらへんのはつまらへんしな」

         期待した私がバカだったかな、甲斐からの言葉を求めるのは・・・・けど、甲斐ってば誤解しそうな態度

         ばっかりとるんだもん・・・・

         甲斐の後をついていく・・・・あれ?うちの方向じゃない・・・・

            「どこに行くの?」

            「埠頭。ここから見る夜景がごっつー綺麗なんや」

            「よく知ってるんだね」

            「たまーに来るんや」

            「そっ・・・・そーだよね。デートスポットにはぴったりだもんね」

            「何言っとんねん、1人で来るんやって」

            「ずっと・・・・彼女いなかったの?」

            「言ったやろ?片想いの奴がおるって」

            「それで?」

            「ええやん、俺のことは」

            「だって、気になるんだもん」

         歩いていくと景色が開けてくる。

            「わぁーすっごい・・・・」

            「やろ?ここの夜景見てるとおちつくんや」

            「うんうんわかる、海にすいこまれそうだよね・・・・」

         返ってこない返事に甲斐を見ると、ずっと遠くを見てる。

         何を・・・・考えてるの・・・・?

            「私・・・・実家に戻ろうかな・・・・」

            「何でやねん、せっかく一人暮らしできたんやろ?」

            「一人でいるの寂しいんだもん・・・・」

            「俺に会いたいからやろ。素直に言えや」

         そう言いながら甲斐の顔は笑ってる。

         また、人をからかって・・・・私は真剣なのに・・・・

            「・・・・そーよ、ずっと忘れられなかった。誰と付き合ったって頭の隅っこには甲斐がいて、甲斐に会い

             たくて戻ってきたのよっ!」

         自分で何言ってるのかわかんなくなってた。

         頭の中は真っ白で・・・・気がついたときには甲斐の唇にkissしてた。

         思わず逃げるように走り出す。

            「待ちや!」

         さすがに、甲斐の足にはかなわなかた。

         手をつかまれて立ち止まる。

            「ごっ・・・・ごめんっ・・・・私、そんなつもりじゃ・・・・」

            「せやったら、どーゆーつもりでしたんや・・・・」

         まともに顔が見れない・・・・

         甲斐の腕から離れようと必死で暴れる私を甲斐が抱きしめる。

            「甲斐・・・・」

            「俺が側にいてやるよ、俺じゃ駄目か?」

         あったかい甲斐の大きな手が私の頬にかかる涙をぬぐう。

            「泣き虫も変わってへんな・・・・」

            「甲斐・・・・私・・・・」

            「ん?」

            「ずっと・・・・甲斐の側にいたい・・・・」

            「もう、どこへも行くな、な?」

            「ん・・・・」

         私の長かった片想いは終わった♪

 


        あとがき&いいわけ

         これは・・・・ホントの話。嘘っ、嘘です(笑)

         うーん・・・・ある人とお話がしたくて・・・・そのきっかけを作るために、即席で作ったお話なんです。

         少ーしだけ関西に住んでたその人に「この男の子関西弁にして?」・・・・と、この小説の元を渡して、

         次に会う口実にした・・・・と、策士だろうがいいんです、私の勝ちなんですから(笑)

         ま、私にとっては思い出のものなのでかなりの駄文とは思いつつも載せてしまいました(苦笑)

 

 

 

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