名探偵への挑戦

                                                               by,蘭*

  それは数日前のことだった。

  探偵事務所に届けられた一通の招待状。

 

invitation

6月21日午前0時。工藤邸にてお待ちしております。

                         

 

    「invitation・・・・って、招待状?!・・・・でも、この差出人キッドよね?・・・・それに工藤邸・・・・って。新一の家で

     いったい何が起こるんだろ・・・・」

 

  結局、その前に新一やキッドから音沙汰があるわけでもなく約束の6月20日。

  新一の家についたのは日付も変わろうとしている、11時55分頃だった。

  “ピーンポーン”

  ドアが開くのと同時に現れたのは、家主の新一じゃなくて服部くん。

    「よぉ、姉ちゃん待っとったで」

    「服部くん?!」

  部屋に通されると、そこにはコーヒーを淹れてる新一とテーブルで何かを描いてる快斗くんの姿。

    「これ・・・・」

  ポストに投げ込まれてたカードを見せると、手を止めにっこり微笑む快斗くん。

    「蘭ちゃんにも是非挑戦して欲しいものがあってさ」

    「あたしに?」

    「そや、俺らで作った暗号解読ゲーム。どや、面白そうやろ?」

    「えっ・・・・暗号解読なんて、あたし絶対ムリよっ」

    「いいから、やってみろって。オメーの推理力見てやっからさ」

    「・・・・そんなこと言って、どーせ苦戦してるの見て楽しむ気なんでしょ?」

    「ちゃうって、ただ楽しむだけやったら和葉呼んで大笑いするっちゅーねん・・えぇから、な?」

    「う・・・・うん」

  服部くんに促されて、あたしはそのゲームに挑戦することにした。

    「ほな、これが俺からの問題や。ゆっくりでえぇからな?」

    「あ、うん・・・・あっ・・・・ねぇ、書くもの・・・・何かない?」

    「これ使えよ」

  渡されたメモ帳に思いついた文字をメモしながら・・・・それでもあまり余計なことは考えずに、

  直感で答えを出していく。

    「あたし・・・こーゆーのなら大丈夫かもっ」

  自然と答える速度もあがっていく。

    「あっ・・・・・・ねぇ、3つの文字が出てきたけど・・・・これで終わり?」

    「おぅ、クリアやな。その文字しっかり控えとくんやで?」

    「あ、うん」

  とりあえず、解けたっていう安心感と嬉しさに少し緊張感もとけていく。

    「さっ、次は?」

    「今度は、早々解けねぇと思うぜ?」

    「そんな風に言われたら・・・・絶対解きたくなっちゃうじゃない・・・・」

    「ンじゃ、やってみろよ?」

    「いいわよ?絶対負けないんだからっ」

  とは言ったものの・・・・ちょっとあたしの苦手分野な問題にぶつかる。

    「・・・・・・これも、違うの・・・・うーん・・・・こっちは?・・・・・・ダメかぁ。・・・・何だろ・・・・」

  ぶつぶつ言いながら解いてるあたしの横で楽しそうに見てる服部くんと新一。

  その傍らで何かに集中してペンをはしらせている快斗くん。

    「どーだ、解けそうか?」

    「ちょっ・・・・ちょっと待って。もぉ少しで分かりそうな気がするのよ・・・・」

  そんなあたしの素振りが可笑しくて仕方ない様子の新一。

  ちょっと苛立ちながらも、頭の中を一掃してもう一度数字を見る。

    「あれ・・・・?これって、もしかしたら・・・・」

  その言葉に書き出したメモを見てにっこり微笑む新一。

    「あはっ、やっぱりね・・・・・よしっ、新一の問題もクリアっ」

    「ほぉ、姉ちゃんなかなかやるやないか」

    「あっ、でもきっとマグレよ」

  そう安心したのも束の間。

  さっきまで何かに夢中になっていた快斗くんから最後の問題が手渡される。

    「これが俺からの問題ね。お望みならヒントもあげっからさ、まぁ頑張ってよ」

    「えっ・・・・ヒント?!・・・・要らないわよ、絶対自力で解くんだからっ」

  ここまで来ると、ホントに自力で解いてみたくなっちゃうのよね。負けず嫌いなあたしの

  性格はこんな所でも発揮される。

    「・・・・なっ、何これ?」

    「だぁから、言ったろ?ヒントがあるってことは一筋縄じゃいかないってことじゃん」

    「・・・・そうだけど・・・・」

    「いつでも空けていいんだぜ?その封筒」

  イジワルそうに笑いながら新一が指差す先には、ヒントが入ってるという白い封筒がある。

    「要らないってば・・・・」

  ムキになって問題のイラストを見るあたし。

    「・・・・何だろ・・・・絶対違う何かが・・・・糸口があるはずなのよね・・・・法則が・・・・」

  また独り言を呟きながら悩みだす。

    「・・・・数字は読めてるのに・・・・順番が・・・・あれっ?あ・・・・やだ、ここ一段ずれてるじゃない・・・・。

    だから何度当てはめてもムリだったのね・・・・っと、できたっ」

    「え、マジ?」

    「んっ、最後のパスも控えたわよ?・・・・後は、これを言葉にするのよね・・・・」

  与えられた文字を見ながら考え込む・・・・どっかで見たことあるような文字なんだけど・・・・。

    「服部、今何時だ?」

    「ちょーど一時やな」

    「えっ、もぉ一時間経ってるの?・・・・あたし、集中してて時間が経つもの忘れちゃってた・・・・」

    「ンで、解けそうか?」

    「うーん・・・・分かるような気はするんだけど・・・・」

    「きっと見えては居るんだよ。並び替えるのに悩んでるだけだろ?」

    「うん・・・・だって・・・・・この文字・・・・・・・・あっー・・・・わ・・わかったかも・・・・・」

  与えられた文字を並べ替えて書き写していくんだけど・・・・あたしの心臓はドキドキが止まらない。

  ペンを持つ手は震えてくるし・・・・一体、どうしちゃったんだろ・・・・。

  落ち着けっ、落ち着くのよ。

    「っと・・・・・・答えは・・・・・・●●●・・・・よね?」

    「ご名答」

    「ほんま・・・・流石やな」

    「えっ・・・・?」

    「流石、名探偵工藤新一の彼女だな・・・ってさ」

    「ちょっ、そんなんじゃないわよ・・・・」

  嬉しいのと恥ずかしいのとで、全身が熱くなっていくのが分かる。

    「なぁ、どうだったよ?・・・・俺らの作った暗号解読した気分は」

    「えっ・・・・あ、うん・・・・。何か、すっごくドキドキしたの・・・・最初は意地になって解いてたんだけど・・・・

  解くうちに何となくいろんな発想が浮かんできてね・・・・最後のパスを解いてる時、ホントは手が震えちゃって。

  きっと・・・・新一達も、こんな風に嬉しかったりするんだろうな・・・・って、そう思ったの」

    「だろ?蘭にもその感動ってのを伝えたくてさ、こうやって誘ったってのが本音」

    「おーい、新一。もっと重大なこと忘れてねーか?」

    「おー、そうやった。ホンマはな・・・もう一個な姉ちゃんを呼んだ理由があんねん」

  何となくその意図を察したあたしは、にっこり笑って快斗くんの傍まで歩み寄った。

    「蘭・・・ちゃん?」

    「今日、お誕生日でしょう?おめでとっ♪・・・・何をあげたらいいのか悩んだんだけど・・・・受け取って?」

    「うわっ・・・・マジ?・・・・さんきゅ〜」

 

    「んっ、あの招待状貰ったときから、なぁんとなく引っかかってたのよね・・・・あの、イラスト・・・・快斗くんが

    描いたのと違うんじゃないか・・・・って、あ・・・・何となくだけどね?」

    「そっか、いや・・・・蘭ちゃんの方から気づいてくれたってのが嬉しいよ」

    「・・・・何や、バレてるやん」

    「だな・・・・っつーか、アレは勘なのか?・・・・それとも・・・・天ね・・・・」

    「・・・・ちょっと、二人ともっ?!そこで何話してるのよっ?!」

    「バ、バーロー。冗談に決まってンだろ?!」

 

  こうして、快斗くんのバースデーパーティーは明け方まで続いたのでした。

  それにしても、楽しかったな・・・・推理するのって。

 

                                                           おしまい♪

 

 

BACK

inserted by FC2 system