Little Birthday 

                                       by,ruka

 

   それは、4月25日・・・・新一と一緒にいる時に起こった事件だった。

   事件に巻き込まれるのは毎度のことだったんだけど・・・・このことをキッカケにあたしは・・・・・・・。

 

   いつものように犯人の女性を追いつめてる新一。

     「そう・・・・犯人はあなた以外考えられないんですよ」

   犯人の女性は最後まで抵抗を続けてたんだけど、認めようとしたその瞬間だった。

   女性の手には隠し持ってたナイフが握られ、刃先はあたしを向いていた。

   突然のことに逃げられず、その場に立ち尽くすあたしに女性は走り寄ってくる。

     「蘭ッ!!」

 

   一瞬の出来事だった・・・・。その場に倒れこむ新一と、凶器を捨てまた逃げ出す犯人の女性。

     「し・・・・新一っ!?・・・・嫌っーー!!」

   すぐに駆けつけた救急車で病院まで運ばれていく新一に何もできなかった・・・・。

   たまたまポケットに入れていたお財布が新一の体を守ってくれたこともあり軽傷だったんだけど・・・・

   そんなことより、なんだか深い罪悪感に包まれてた。

 

     「あたしが側にいると・・・・新一・・・・自由に動けなくなっちゃう・・・・」

 

   毎回感じていたことではあったの・・・・。

   新一が事件だって出て行くたびに止めようとするあたしも、

   事件現場で犯人を追いつめてるところにいるあたしも、

   新一の邪魔になってるんじゃないかって・・・・。

 

   5月2日、新一が退院したことを阿笠博士から聞いた。

   ホントは何度か新一から連絡が入ってはいたんだけど・・・・気持ちの整理もついてないまま会うのが怖

   くて、お見舞いにも行かず、連絡も全て絶っていた。

 

     「・・・・新一・・・・」

   2日後に印のついてる、カレンダーを見つめながらそう呟いた時だった。

   “pipipi・・・・”

   新一からの着信に思わず携帯を握る。

     「ダメよ・・・・今出たら・・・・また、同じこと繰り返しちゃう・・・・もぉ、新一が傷つく姿なんて見たくない

      もん・・・・」

   何度かの着信の後、諦めたのか電話は静かになった。

     「ごめんね・・・・新一」

   ホントはずっと一緒にいようって思ってた、新一の誕生日が迫ってるのに・・・・声を聞くとすら怖くなって

   るなんて・・・・。

   ベットに腰掛けた時だった。

   “コンコン”

   ドア越しに聞こえるノックの音・・・・。

     「蘭、居るんだよな?」

     「・・・・新一・・・・」

     「ンだよ・・・・心配させやがって、この10日近く全く連絡ねぇから・・・・どーしたのかと思ってたんだ

     ぜ?」

     「・・・・ごめん・・・・」

     「なぁ・・・・開けてくんねぇか?」

     「・・・・ごめん・・・・あたし・・・・あたしね・・・・」

   あたしの言葉に、何かを察した様子で一瞬の沈黙が起こる。

     「・・・・開ける気はねぇんだな・・・・?」

     「・・・・ごめん・・・・明日・・・・明日に・・・・しない?」

   たった一枚の薄いドアなのに、重く厚く感じてた。

     「わぁったよ・・・・明後日、俺補習で学校行ってっから・・・・そん時な?おめぇ、部活だろ?」

     「・・・・ん・・・・」

   明後日・・・・きっと新一誕生日だって忘れてるんだ・・・・。

   毎年のことだけど、ホントそーゆーところ無頓着なのよね。

 

   そして・・・・5月4日。

   結局、どっちつかずのままあたしは部活に出ていた。

   部活を終えて、新一のいる教室に向う途中。

   体育館裏にある階段に座っている新一の後ろ姿が見えた。

   何も言わず新一の所まで行くと、新一の横に腰掛けた。

     「部活・・・・終わったのか?」

     「ん・・・・」

   頬杖をつきながらまっすぐ前を見ている新一。

     “イヤホン・・・・何か音楽でも聞いてるのかな・・・・”

   あたしの視線にイヤホンを外すと、

     「逆探知のテープ・・・・目暮警部に頼まれてさ・・・・」

   少し微笑んでまた耳に戻す。

     “・・・・きっと、あたしの声なんて・・・・聞こえてないわよね・・・・”

     「・・・・ごめんね・・・・あたしのせいで、新一に怪我させちゃって・・・・。あれから、ずっと考えてたの。

      もしかしたら、あたしは新一の邪魔になってるんじゃないか・・・・って。多分、ずっと前から思ってた

      ことなんだと思うんだ・・・・けど・・・・けどね、この間新一が怪我したとき・・・・確信しちゃったってい

      うかそばにいなかったら・・・・もっと・・・・動けるんだって・・・・。・・・・だから・・・・だからね・・・あたし

      ・・・・もぉ、新一の邪魔にならないように・・・・って・・・・。・・・・それで、連絡もしなかったの・・・・。

      でも・・・・あたし・・・・やっぱり、新一のこと・・・・新一のこと好きなの・・・・。離れるなんてできなく

      て・・・・。あっ、推理の邪魔よね・・・・。あたし、行くね・・・・」

   1人で喋ってる自分に、何か恥かしくなって立ち上がると歩き出した。

   その瞬間・・・・。

     「バーロォ・・・・ンなくだらねぇとこ考えてんじゃねぇよ・・・・。俺にとっておめぇがどれだけ必要なのか、

      そんなこともわかんなくなっちまったのかよ?・・・・俺がいつ、蘭のこと邪魔だなんて言ったんだ?

      全部おめぇの勝手な妄想だろーが」

     「・・・・新一・・・・」

     「ったく・・・・あんだけ喋っといて一つ忘れてねぇか?・・・・もっと、言うことあんだろ?」

   イヤホンを外しながらあたしの前まで歩いてくる新一。

     「き・・・・聞こえてるんだったら・・・・言ってよ・・・・」

     「面と向って話そうともしなかったくせに」

   イジワルそうに笑いながら、そっと抱き寄せてくれる新一。

     「今年は、忘れてなかったのね。Happy Birthday 新一」

     「あぁ、覚えとかねぇと・・・・祝ってもらえなくなりそうだったからなぁ、今年は」

     「もぉ・・・・」

 

   あたしの思ってた不安は解消された。

   けど・・・・ちゃんと、新一の本音が聞けたし、良かったのかな。これで。

 

                                          

 

                                            おしまい♪

 

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