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                                       by,ruka

 

   ―下校中―

     「なぁなぁ、スゲェだろ?ホームズが・・・・蘭?」

     「・・・・あっ、ごめん・・・・えっと・・・・何だっけ?」

     「ンだよ、聞いてなかったのか?ったく相変わらずボケッーっとしてんだから」

     「別に・・・・ボケッーとなんかしてないわよっ」

     「んじゃ、別のことでも考えてたっつーのかよ?」

     「えっ・・・・?・・・・ん・・・・かな」

     「・・・・ったく」

   横でブツブツ言ってる新一の言葉も上の空のままだった。

   いつかはバレちゃうんだし・・・・話さなきゃとは思ってるコトだったんだけど・・・・。

     「そーいや、今週の土曜ってあいてっか?」

     「土曜?・・・・あ、その日はちょっと・・・・」

     「んじゃ、日曜は?」

     「ごめん・・・・そ・・・・園子と約束してて・・・・」

     「最近やけに用事はいってねぇか?」

     「えっ・・・・?き・・・・気のせいよ」

   笑って誤魔化すあたしの顔はやっぱり引きつってるのかな、新一は何も言わずまっすぐあたしを見てる。

   最初のきっかけはいっつも事件でいない新一のこと考えちゃうのが嫌ではじめたコトだった。

   なのに今のあたしは断ることができず、家のことに学校・・・・でいっぱいいっぱいだった。

   新一の視線を逸らすように、時計に目をやる。

     「あっ・・・・いっけない、あたし帰ってご飯の支度しないと・・・・」

     「蘭っ?!」

 

   新一の声を振り切って家に帰ってきた。

   このまま、誤魔化していけるとは思ってなかったけど・・・・まさか、こんな形でバレちゃうなんて・・・・。

 

   ―週明けの放課後―

     「蘭、今日部活あんのか?」

     「んーん、ないわよ」

   そう言いながら歩き出すと、暫くの沈黙をやぶるかのように新一が口を開いた。

     「この間の日曜・・・・ってホントは何してたんだ?」

     「えっ・・・・?」

     「園子と約束してるって言ってたよなぁ?・・・・あいつ、蘭とは会ってねぇってさ・・・・」

     「園子から・・・・聞いたの?」

     「まぁな、向うからそう言ってきたんだけどな・・・・んで?何してたんだよ?」

     「・・・・いいじゃない・・・・ちょっと約束があっただけよ・・・・」

     「約束ねぇ・・・・」

   事件を捜査してる時みたいな疑いの眼差しであたしを見る。

     「あ・・・・あたしは別に・・・・疑われるようなことなんてしてないし・・・・」

     「俺が事件でいねぇ時散々疑ってた奴が言う台詞かよ」

     「何よっ・・・・新一はどっか行ったままずっと帰って来なかったじゃないっ・・・・!」

     「今は俺がいなかったことと関係ねぇだろ?」

   “pipipi・・・・”

   2人の会話をさえぎるようにあたしの携帯が鳴る。

     「・・・・はい・・・・毛利です・・・・」

     『あっ、毛利さん?急で悪いんだけど、明日仕事に入ってくれないかな?』

     「えっ・・・・明日・・・・ですか?」

     『そう、夕方5時から8時の3時間でいいのよ』

     「・・・・あの・・・・かけ直していいですか・・・・?」

     『いい返事待ってるわよ』

   携帯を切る。

     「おめぇ、何やってんだよっ」

     「いいじゃないっ・・・・新一には関係ないでしょっ!?」

     「あぁ、そうだな。関係ねぇよな」

   その場から足早に去っていく新一の後ろ姿をただ見送るしかできなかった・・・・。

   なんで、素直に話せないんだろ。いっつもいっつも・・・・。

 

   それから、数日間。あたしは学校でも殆ど新一と口を聞くことはなかった。

   あたしは、そんな気を紛らわすだけのために予定を入れたりして・・・・。

   ぼぉーっと歩きながら校門を抜けた時だった。

     「・・・・相変わらず、ぼぉーっとしてんな」

   聞きなれた声が頭の上からふってくる。

     「・・・・新一っ・・・・ぼぉーっとしてなんか・・・・」

     「してなかったら、机の上に忘れ物なんかしねぇよな?」

     「えっ・・・・?あっ・・・・」

   そう言いながらあたしの財布を手に持ってる新一。

     「・・・・これからバイトか?」

   新一から財布を受け取ると、一緒に歩き出した。

     「んーん・・・・今日は入れてない・・・・」

     「けどよぉ・・・・蘭みてぇな天然でよくバイトできたよな?」

     「・・・・どーゆー意味よ・・・・?」

     「あ?そのまんまの意味だぜ?いつかミスすんじゃねぇか・・・・ってな」

     「ちょっとっ、新一!?あたしは天然なんかじゃないわよっ!?」

     「いいや、おめぇは天然だって」

     「違うってばっ、だいたい何処に証拠があるっていうのよ?」

     「バーロォ、おめぇと何年一緒にいると思ってんだよ?証拠なんて数えきれねぇくらいあるぜ?」

     「・・・・新一・・・・」

   なんか、久々に楽しい会話してる気分だった。

   新一の家とあたしの家との分かれ道。

     「んじゃな、蘭」

     「ん・・・・またねっ、新一」

   そう言って振り返った瞬間・・・・一瞬立ちくらみみたいにあたりが暗くなって・・・・それから先のことは何

   も覚えてなかった。

     「・・・・っん・・・・」

   目を覚ますと、見慣れない部屋の中だった。

     「・・・・ここ・・・・」

     「目・・・・覚めたか?」

   心配そうに覗き込む新一。

     「えっ・・・・新一・・・・あたし、どうしちゃったの・・・・?」

   起き上がろうとするあたしを止め、

     「ったく・・・・働きすぎなんだよ、おめぇは・・・・まだ、寝てろ」

     「・・・・うん・・・・」

   そのままベッドに横になった。

     「あっ・・・・でも、帰ってお父さんの御飯作らないと・・・・」

     「さっき、俺がおっちゃんに電話しといたから大丈夫だって」

     「うん・・・・新一・・・・ごめんね・・・・?」

   ベットの側に座りじっとあたしを見る新一。

     「その・・・・ごめんね・・・・は何に対しての謝罪だ?」

     「え・・・・?」

     「まさか、全部まとめてごめん・・・・とは言わねぇよな?」

   意地悪そうに笑いながら言う新一。

     「だから・・・・バイトを・・・・黙ってたこと・・・・?」

     「それから?」

     「迷惑かけちゃったこと・・・・?」

     「ンなの何とも思ってねぇよ」

     「・・・・えっ・・・・、だってあたし他に何かした・・・・?」

     「じゃ、あの言葉は無意識・・・・悪気なく出た本心だったってわけか・・・・」

     「・・・・し・・・・新一・・・・?・・・・あの言葉って・・・・」

     「思い出したか?」

     「・・・・ん・・・・新一には関係ない・・・・って言っちゃったこと・・・・?」

     「俺だって、事件の間何度おめぇに言いそうになったかわかんねぇのによ・・・・随分、軽く口に

      してくれたじゃん?」

     「・・・・ごめんね・・・・」

     「ま、今回だけは許してやるよ。あ・・・・一つ約束してくんねぇか?」

     「うん」

     「バイトの件はしょーがねぇにしても・・・・ぜってぇ、無理だけはすんなよ?」

     「あ・・・・うん」

     「本当にわかってんだろーな?」

     「・・・・うん」

   疑いながらもあたしを見てる新一の瞳はいつもよりずっと優しく見えた・・・・。

   いつか、もっと素直にぶつかれたらいいんだけどな。

 

                                                 おしまい♪

 

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