シンデレラ・クリスマス

                                                    by,ruka

 

〜回想〜

  「じゃ新一、明日の夜7時米花シティビルのツリーの前で待ってるからねっ?」

  『おぅ、わぁってるよ』

 

―米花シティビル前―

時計を見ると10時を回ろうとしている。

せっかくのクリスマスイヴ、新一との待ち合わせなのに・・・・連絡もくれないまま、3時間なんて・・・・。

今にも雨が降ってきそうな米花シティビルの前はイヴを楽しもうとしてるカップルでいっぱい。

恋人を待ってる人たちの姿は一組、また一組と楽しそうに消えていく・・・・。

  「連絡くらいくれたっていいじゃない・・・・」

携帯電話を握り締め、そうつぶやいたときだった。

“pipipi・・・・”

慌てて着信を見ると新一から。

  「し・・・・新一っ!?」

  『悪ぃ・・・・急に事件が入ってさ・・・・今、現場に居ンだよ・・・・』

  「事件って・・・・だったらどーして連絡くれないのよっ・・・・!?」

  『しゃーねぇだろ?・・・・連絡できる状況じゃなかったんだからよ」

何かが・・・・あたしの中で切れた感じだった・・・・。

  「そう・・・・もぉ、いいわよっ」

  『だから・・・・ゴメンな?』

  「知らない・・・・好きなだけソコに居たらいいじゃない・・・・」

あたしは、泣きそうな声でそれだけ言うと電話を切った。

今までずっと待ってたんだもん・・・・こんな時くらい断ってくれたっていいのに・・・・。

  「これから・・・・どーしよ・・・・」

今から帰ったって、お父さん居ないって言ってたから一人になっちゃうし、そんな時に新一に家に来られても

あたしどーしていいかわかんなくなっちゃう・・・・。

そんなことを考えながら、近くのベンチに腰掛けた。

もう、待ち合わせしてる人たちの姿は殆どなくて、ツリーのイルミネーションだけがぼやけて見える。

  「や・・・・やだ、あたしなんで泣いてるのよ・・・・新一が近くにいないのはいつものことじゃない・・・・」

わかってることなのに、後から後から涙が出てくる。

 

あれから・・・・どれくらい経ったんだろう・・・・寒さも忘れてぼぉっーとしてると冷たい感触で我に返った。

  「嘘っ・・・・雪?」

慌てて時計を見ると11時50分。

  「あたしったら、何やってるんだろ・・・・こんな所に居たって仕方ないのに・・・・バカよねぇ。待ってたって来るはず

   ないのに」

帰ろうっとベンチから立ち上がった瞬間。

  「それでもこの時間まで待っててくれたっつーことは、信じてくれたってことだよな?」

  「しっ・・・・新一っ!?」

大きなクリスマスツリーの後ろから顔を覗かせる新一。

  「お前なら待っててくれるって、信じてたぜ?」

悪びれた様子もなくにっこり微笑む新一。

  「なっ・・・・何よっ。今頃来たって許さないわよっ」

嬉しいくせについ意地をはって背中を向けてしまうあたし。

  「だからっ・・・悪かったよ・・・・」

  「知らないわよっ・・・・」

  「バーロー・・・・体冷えちまってるじゃねぇか・・・・」

背中を向けているあたしを無理矢理自分の方に向けそっと抱きしめられる。

  「しっ・・新一・・・・・」

  「途中で電話切った上に、あれから何度電話しても出やしねぇ・・・・こっちが心配すンだろーが」

  「・・・・電話・・・・?」

慌てて電話を見ると、数回にわたって入ってる新一からの着信履歴。

  「家に行っても誰もいねぇし・・・・」

新一の言葉にかぶさるように聞こえる12時を告げる鐘の音。

  「・・っと・・・・メリークリスマス・・・・だな、蘭」

にっこり微笑みながら耳元で囁く新一。

  「んっ・・・・ホワイトクリスマスよね」

そう言って新一を見ると、あたしを見つめる新一の視線・・・・。

少しずつ近づく新一の顔に思わず瞳を閉じると・・・・そっと重なる口唇・・・・。

  「・・・・さて、うち・・・・来っか?・・・・ここじゃ寒ぃだろ?」

  「うんっ」

怒ってたことなんてすっかり忘れちゃうような、新一の言葉に・・・・やぁっぱり信じてて良かったなって思った。

 

                                                           おしまい♪

 

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