真実

                                                     by,流香

 

きっかけは、コナン君が話してる1本の電話だった。

それまでは、何となく分かってても自分を誤魔化しておさえてきたけど、今回はそうもいかないみたい。

―扉の向こうから聞こえてくるコナンの声―

  「おぅ、わぁってるよ。じゃーな服部。えっ?・・・・あぁ、今ンところはな、また何かあったら連絡すっからよ」

―扉の反対側で聞いている蘭―

  (コナン君の電話の相手・・・・服部君よね・・・・。しかも、あの話し方・・・・まるで新一みたい)

―電話の受話器を置く音が聞こえ、慌てて部屋に戻る蘭―

  「前からおかしいとは思ってたのよね・・・・あたしが思ってたこと、やっぱり間違いじゃなかったんだ・・・・」

 

―数日後の週末―

  「えぇー!?・・・・蘭ねぇちゃん1人で旅行するの!?」

  「うん、ちょっとお友達と約束しててね(微笑)」

  (蘭の奴・・・・何か隠してやがんな・・・・)

  「蘭ねぇちゃんが旅行中、おじさんと2人になっちゃうんだよ?・・・・御飯とかどーするの!?」

  「大丈夫よ。ちゃんとお父さんに頼んであるから、ねっ?・・・・それに、今回はどーしてもコナン君を連れて

   ってあげられないのよ。だから、ちゃんと留守番しててねっ?(微笑)」

  「でも・・・・」

  (俺を、連れて行けない・・・・ってことは相手は男か?・・・・余計気になるじゃねぇかよっ)

  「たった、2日だけでしょ?・・・・待ってられるわよね?」

  「う・・・・うん、わかったよ」

  (ぜってぇ・・・・つきとめてやっからな・・・・蘭の隠してること)

 

―新大阪駅―

  「蘭ちゃんっ!こっちやこっち!」

  「久しぶりー、和葉ちゃん」

  「急にこっちに来る言うからホンマビックリしたんやで?」

  「あっ、ごめんねー。どーしても急ぎだったし、直接話したかったのよ」

  「そっか、じゃ平次後は頼んだで?」

  「えっ?和葉ちゃん帰っちゃうの?」

  「今日はどぉーしても外せない用事あったんや、蘭ちゃん明日もまだこっちにおるんやろ?そん時ゆっくり

   話そうなぁ」

  「あっ、うんっ。ありがとねっ」

  「ええよ、またなぁ。」

―帰っていく和葉を見送る平次と蘭―

  「で、何や改まって話って?・・・・大阪まで飛んでこなアカンようなことなんやろ?」

  「うん・・・・ちょっとね・・・・」

  (蘭の奴・・・・服部に用事だったのか・・・・確かに奴は男だが・・・・はは、まさかなぁ(苦笑))

―タクシーの陰に隠れるコナンを見つける平次―

  「(・・・・ん?・・工藤!?)・・・・ほな・・・・場所変えようか?静かな場所の方がええやろ?」

  「あっ、うん・・・・」

  「お・・・・大阪城公園でも行こか?」

  (服部・・・・俺に気づいたのか、やけにでけぇ声出しやがって・・・・)

 

―大阪城公園―

  「ごめんね、服部君」

  「ええよ。で・・・・何や、話って」

  「うん・・・・服部君・・・・3日くらい前の夜、コナン君と電話で話してたよね?」

  「えっ?」

  「あたしね・・・・ずっと考えてたの。・・・・コナン君と新一が同一人物なんじゃないか・・・・って」

  「なっ・・・・何言うてんねん、俺と会うてるんは、ホンマの工藤新一やで?」

  「・・・・じゃあ・・・・何であの電話の時、コナン君は『服部』って言ったの?・・・・いつものコナン君なら

   『平次兄ちゃん』って言うじゃない?それに・・・・あの話し方・・・・あれは・・・・新一の話し方と一緒

   よ!?」

  「なっ・・・・なぁ、姉ちゃん・・・・姉ちゃんの『工藤に会いたい』っちゅー気持ちがそうさせてるんとちゃう

   んかな?」

  「それだけじゃないの・・・・新一とコナン君には共通点もたくさんあるのよ?・・・・服部君・・・・知ってる

   んでしょ?・・・・もう隠さないで教えてよ・・・・」

今まで優しそうにあたしを見ていた服部君の表情が変わって、低い穏やかな声で呟いた。

  「もし・・・・それがホンマやったら、どうするんや?」

  「えっ・・・・?」

  「姉ちゃん、工藤のこと好きで待っとるんやろ?もし、そばにいるあのボウズが工藤やったら・・・・姉ちゃん

   はどうするつもりなんや?」

  「あ・・・・あたしは・・・・」

あたしは、本当のこと知ったらどうするんだろう・・・・。

ただ、真実を知りたくてここまで来ちゃったけど、服部君の言う通りよ・・・・もし、コナン君が新一だったら、

あたしはコナン君を追い出す?・・・・それとも、新一として好きでいられる?

そんなこと考えもなしに・・・・来ちゃったなんて。

  「俺の口から言えるんは『工藤は工藤や』っちゅーことだけや。それ以上のことが調べたいんやったら、

   本人に直接聞くんが一番やないんか?」

  「・・・・服部君・・・・」

  「平次兄ちゃん・・・・もういいよ」

突然茂みの影から出てきたコナン君・・・・。

話・・・・全部聞かれてたのね。

  「蘭ねぇちゃん・・・・ボクが後ろからついてきてること、わかってたんでしょ?しかも、ボクがはぐれないよ

   うに気にしてたよね?」

  「な・・・・何で・・・・?」

  「電車に乗るときも、ボクが乗り遅れないように1本逃してくれたし・・・・新幹線も、窓口はガラガラで券売

   機にはいっぱい人が並んでるのにわざわざ並んで切符を買ってたよね?」

  「や・・・・やだな・・・・コナン君てば、何であたしがコナン君を気にしてそんなことしなきゃいけないの?

   ・・・・だいいち、今日は1人で出かけるって言ったはずでしょ?」

  「ボクがついてくるように・・・・言ったんでしょ?」

  「コ・・・・コナン君・・・・、ぜ・・・・全部偶然じゃない・・・・。あたしは、コナン君がついてきてることなんて・・

   ・・知らなかったし、それに・・・・券売機で買ったからって・・・・コナン君に何を知らせてるって言うのよ?」

  「自由席ってことだよ。蘭ねぇちゃんが指定席に座ったらボク、ついて行けなくなっちゃうでしょう?」

  「だったら・・・・分かってるなら、答えてよっ!?・・・・コナン君は・・・・」

  「姉ちゃんっ、それ言うたらアカンってっ!」

今のあたしには服部君の言葉さえも聞こえなくなってる。

  「コナン君はっ、新一なんでしょっ!?」

  (隠そうと思えば隠せっけど・・・・蘭の奴・・・・泣いてやがる・・・・限界かな・・・・)

  「蘭・・・・ねぇちゃん・・・・ボクは・・・・ボクは」

“pipipipi・・・・”

コナン君の言葉を携帯のベルがさえぎった・・・・。

鳴っていたのは服部君の携帯。

  「はい・・・・えっ!?く・・・・くどぉー!?」

  「服部君っ!?」

  「工藤からや・・・・代わってくれって・・・・」

やっぱり、別人だったってこと?

でも、コナン君も服部君も認めそうな口ぶりだったのに・・・・。

  「新一・・・・新一なの・・・・?」

  『よっ、蘭』

  「い・・・・今何処にいるの!?」

  『あ?博士ン家だけど・・・・?たまに会いに言ってみりゃ蘭はいねぇし、それより、何で大阪なんかに

   居んだよ?』

  「えっ・・・・だって・・・・新一が・・・・・と、とにかく、明日には帰るから絶対にいてよ!?」

  『俺がどうかしたのか?』

  「んーん・・・・何でもないの。明日には戻るからねっ」

  『ったく・・・・服部とコナンに迷惑かけんじゃねぇぞ?』

  「わ・・・・わかってるわよ」

  『じゃ、コナンに代わってくんねぇか?』

  「あ、うん・・・・コナン君、新一が代わってくれって」

何だか、スッキリした気分だった。

そうよね、やっぱり新一は新一よね。

   「もしもし・・・・?」

   『久しぶりですね、名探偵さん』

   「おめぇ・・・・まさか、一部始終見てたってんじゃねぇだろぉな?」

   『じっくりとね(笑)・・・・まだ彼女には明かさない方がいい真実のようでしたから、ちょっと手を貸したまでですよ』

   「借りができちまったってわけかよ・・・・」

   『また、いずれ伺いますよ・・・・西の名探偵さんにもよろしく・・・・では』

“ガチャ、ツーツー”

  「あっ、新一兄ちゃん!?・・・・切れちゃった、平次兄ちゃんにも宜しくってさ・・・・キッドがな(苦笑)

  「そ・・・・そーか・・・・く・・・・工藤がなぁ」

―コナンと平次に近づいてくる蘭―

  「服部君、コナン君・・・・ごめんねっ。やっぱり、あたしの勘違いだったみたいね」

  「ええって、ま、工藤は姉ちゃんの近くにいるんや、はよ帰って会わな、なぁ?」

  「うんっ、そうだねっ」

  「ボクも全然大丈夫だよ(笑)・・・・良かったね、蘭ねぇちゃん」

  (ま、とりあえずは助かったってことだよな・・・・)

結局、今回の旅行はあたしの勘違いだけで終わっちゃったみたい。

でも、良かったぁ・・・・(笑)

 

                                                   おしまい 

 

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