= White Present =

 

        一ヶ月前 ―――― 二月十四日

 

          今日ぐらいは、素直になりたくて
          義理だと言いつつも渡したいチョコがあったの

 

          けれど、肝心なアイツは今日も何処かに行っている
          半ば諦めていた事だったけど、やっぱり淋しいなぁ

 

          夜、アイツの家に行こう
          せめてチョコを置いておこうと思った

 

 

 

          新一の部屋へと向かう廊下――

 

          ガタッと二階から不思議な音がした
          誰も居ないはずなのに、どうして音が

 

          もしかして新一

 

          私は真相を確かめるために二階へと向かった

 

 

          音がしたと思われる部屋へ

 

          部屋の中には誰も居ない様子だった
          少し落胆して肩を落とし溜息をついた
          そして、ふとベランダを見ると人影が見えた

 

 

          ………

 

 

          恐る恐る近づくと そこには

 

          座り込んで、夜空を見ている白き怪盗がいた

 

 

          ギィィとゆっくり窓を明け彼に近づいた

 

          すると、音に気づいた彼は
          此方を見て口許に笑みを浮かべた

 

 

           「これはこれは。毛利探偵のお嬢さんではないですか」
           「なぜ、貴方が此処にいるんです?」
           「
一休み、と言った処でしょうか」

 

 

         苦笑を浮かべ答える彼

 

         白き衣装が紅く染まっている場所を見つけた

 

 

          「あ、貴方怪我をしているじゃないですか」
          「大丈夫ですよ。これぐらい

          「これぐらい、じゃありませんっ。ちょっと待っていてください」

 

 

         そう言って、ベランダを出た

 

         暫くして、救急箱を持って戻り
         彼を手当てした

 

          「ありがとうございます。これで空も飛べる」
          「いぇ、怪我人をほっとけないですから」

 

         私はにっこりと微笑んで答えた

 

         そして私はふと傍に置いてあったチョコに目を移した

 

          「あ、あのこれ、貰ってもらえませんか?」

 

         私は、新一に渡すつもりだったチョコを彼に渡した

 

          「しかし誰かに渡すためのものなんでしょう?」
          「
はい。けれど相手が居ませんから」

 

 

         今年ぐらいは いいよね?

 

         どーせ、アイツには関係ないだろうし

 

 

          「はい。ありがとうございます」

 

         彼は微笑んで受け取ってくれた

 

         その後、少し会話をして
         彼は再び夜の帳へと消えていった

 

 

 

 

 

         今日 ―――― 三月十四日

 

         心に淋しさがよみがえる
         ほぼ音信不通の状態

 

 

          「ホントどこにいるのよ」

 

 

         探偵事務所の電話が鳴る――

 

 

          「はい、毛利探偵事務所」
          『あ、俺。
蘭か?』

 

         ――…え、新一?

 

         突然の事で少しびっくりした

 

          『おーぃ、らーん? もしもー…――
          「新一のバカッ」

 

         新一の言葉を遮るように強く声に出した

 

          『……お、オメェ第一声、それかよ』
          「何よっ。心配していたんだからっ」
          『悪ぃ悪ぃ
……だって――
          「事件が俺を呼んでいる、でしょ?もぅ、聞き飽きたわよ」
          『あはは
返す言葉もねぇな』

 

 

         久しぶりに聞く アイツの声

 

         ほっとする――

 

 

          『なぁ、蘭。今日の夜、空いているか?』
          「え、
うん。今日は特に用事もないし
          『そっか。なら、俺ン家に来てくんねぇかな』
          「え?
いいわよ」
          『よかった。お礼もしてぇし

          「
お礼?」
          『あ、悪ぃ。また、用事が出来ちまったみてぇだ。んじゃ、夜にな』

 

         そう言い残して、一方的に切られた電話――

 

         受話器と睨めっこをしながら、少し首を捻った

 

         私 何か新一にしてあげたっけ?

 

         不思議に思いながらも新一の家へと向かった

 

 

 

          「新一、居るの?」

 

         玄関の扉を開けて、きょろきょろ見ながら中へと入る
         だけど、やっぱり人の気配はない

 

         あの電話は何だったの?
         不安に駆られ、その場で悩んだ

 

 

          「よぉ、蘭。待たせたな」

 

         声がする方へ体を向けた

 

         けれど、逆光で姿は見えなかった

 

          「新一?」

 

         恐る恐る近寄ってみると

 

         そこにいたのは新一だった

 

          「新一っ」

 

         傍に近寄ろうとした その瞬間

 

 

          「行くなっ、蘭」

 

 

         ……えっ?

 

 

 

         後ろから声が聞こえた

 

         声の持ち主を間違えるはずはない
         あれは、新一の声

 

 

         後ろを見ると、はやり新一だった

 

         全速力で、走ってきたように息を切らして
         此方を見ていた新一がいた

 

 

         え、じゃぁ目の前に居る新一は

 

 

         もう一度、目の前に居る新一を見た

 

         すると、彼は口許に笑みを浮かべた

 

 

          「私めからのバレンタインデーのお返し、ですよ」

 

 

         人差し指を口許に当て、小声で言う彼

 

         そして、白煙に包まれ姿を消してしまった

 

 

         去った場所にカードが落ちていた

 

 

 

         「毛利探偵のお嬢様へ:

         先日はありがとうございました。手当てして頂き助かりました。

         そして、チョコレートも美味しくいただきました。

         お礼として、目の前に居る彼をプレゼントします。

         それでは また逢える日に    怪盗キッド」

 

 

         クスッ

 

         大胆すぎるわよ

 

         思わず、笑みがこぼれた

 

 

          「おぃ、蘭。ヤツに何かされたかっ?」

 

         後ろにいた新一が傍に来て心配そうに声をかけた

         私は、首を横に振って答えた

 

          「んーん。ただ素敵なプレゼントを貰った、かな」
          「はぁ?何だ、ソレ」
          「いーの、知らなくて。
何で、ここに居るのよ?」
          「あン?キッドに脅されたんだよ。来ねぇと
……って」

 

         最後、新一は聞き取れないぐらいの小声で言った

 

          「何って?聞こえないわよ」
          「〜〜〜っ、俺からオメェを奪うって言われたんだよっ」

 

         新一は照れながら言った

 

         私は吃驚して絶句してしまった

 

 

         そして絶句は笑いと変わった

 

          「わ、笑うんじゃねぇよ」
          「だって、なんか
もぉ、びっくりしちゃって」
          「ったく
ま、事件も終われたし、一緒に居れっから安心しろ」
          「え、ホント?」
          「
多分。事件に呼ばれなければ」
          「何よ、それーっ。いつもと変わらないじゃないのーっ」

 

         けれど、やっぱ内心は嬉しかった

 

         少しだけでも傍にいれるから

 

 

         今日はこんな事が起きるなんて

 

         とても印象に残る日となったよ

 

 

 

                             =Fin=

 

 

 

      =後書=

       やっぱ、ホワイトデーなら白き怪盗でしょ?(ぇ)キッド&蘭、新一&蘭で迷っていた。
       けれど、徒然に書いてみたらこうなった。ホント、節操なし

       ッてことで、何か言ってくれたら書くよ?(笑)
       嘲笑うのも良し、変だと罵っても良し。今回は、ただのバレンタインのお返しです。
       それにしても、蘭口調が出来ない。おなごは難しい(汗
/笑)

                                                   H19.3.14
                                                   From.sakuya

 


        朔也様

        まさか、ホワイトデーに届くとは思ってなかったので吃驚です。
        ホントにいつもありがとうございます♪
        今回のこのお届け物
色んな気持ちで読ませていただきました。
        なぁんとなく
キッドの方に行ってしまって欲しい反面、後ろから止める新一に
        ドキッとしたり
……でも、これってキッドからの贈り物なのかな。
        だとすると
……(何/笑)
        
        また、素敵な作品お待ちしてます☆
        って
書いてくれるんだじゃ、リクエストも考えときます(笑)

BACK

 

 

inserted by FC2 system