【 オフ小説/A mystery game 】



                      それは…一通のメールから始まった。



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                      件名:蘭へ。携帯からじゃなくて悪ぃ。
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                      よォ、久しぶりだな。元気にしてっか?
 
                      関西地区で事件を解決中。
                      一緒に服部と白馬も居ンだけど、
                      トロピカルランド以来だしよ、
                      USJにでも行かねぇか?
                      気晴らしにもなンだろ?(笑)
                      着いたら、連絡くれよな?
                      土曜日…10月20日。10時に駅前で。

                                        工藤新一
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                     全く知らないメアドだけど…文面で、新一がどこかのPCから送ってきてることだ
                     けはわかる。
                     普段、新一からのメールは受け取ってることもあって、微妙な違和感のある文
                     面だな…とは思ってたんだけど、それ以前に大阪に誘われてるメールにあたし
                     は疑うことすら忘れてた。

                      「10月20日の土曜日よね…10時に駅前…USJのある駅でいいのかしら…時
                       間調べとかなきゃ…服部くんや白馬さんも一緒なのかな…」

                     その日がOKであることを伝えるメールと待ち合わせ場所なんかの詳細を何通か
                     ターンしてUSJに行くことが決まった。

                     これが…罠であることも知らずに………。



                     ―― 10月20日 ――
                     指定された『大阪USJ・ユニバーサルシティ駅』に着いたものの、新一の姿は無
                     くて約束の時間から15分は過ぎようとしてる。

                      「こんなとこまで呼び出して…事件とか、無いわよね…」

                     何となく、不安を覚えて新一の携帯に電話してみる。
                     10コール後の留守番メッセージ。
                     溜息をつきながら携帯を閉じた瞬間…新一からの電話着信に慌てて受話器を耳
                     にあてる。

                      「新一?今どこに…」
                      『よォ、蘭。何かあったのか?』

                     あたしの質問を遮るように、聞こえてくる新一の声。

                      「えっ…何かあったのか…って、新一がUSJに行こうって誘ってくれたんじゃな
                       い。だから、こうして大阪まで…」
                      『…オメー、今何処に居ンだよ?』
                      「…大阪よ…?ユニバーサルシティ駅出たところ…新一がメールくれたんじゃ
                       ない」
                      『…は?…俺が、蘭を此処へ誘ったのか?メールで?……園の入り口まで来
                       れっか?』
                      「いいけど……新一、今…中に居るの?」
                      『あぁ、予告状と依頼があってさ…今、園内を捜査中なンだよ。折角来てくれて
                       ンのに悪ぃけど…遊ぶっつーのはまだ無理だぞ?』
                      「何よそれ…こっちは、誘われたから来たのに…」

                     内心、イラッとしながらも、園の入り口まで向かって歩いていくと地球儀のモニュ
                     メントの前に見慣れた3人の姿が見える。

                     メールにもあったように、その場に居るのは白馬さんと服部くん…一体どういうこ
                     となの?
                     何となく、不信に思いながらも3人の傍に近づいてみる。

                      「よぉ、久しぶりやな。蘭ちゃん」
                      「先月はお世話になりました」

                     …2人の姿は本物みたい。
                     あたしが服部くんと会うのは8ヶ月ぶりくらいだし…それに、白馬さんとは先月
                     会ってる。それじゃ、メールをくれた新一は…?

                      「立ち話もなんですし…中でお茶でもしませんか?」
                      「だな、ただ…蘭を危険な目に合わす可能性があるっつーのは…」
                      「何言うとんねん、工藤。蘭ちゃん1人くらい、俺でも守れるで?」
                      「あっ…あたし、邪魔なら帰るし…和葉ちゃん尋ねたっていいんだし…」
                      「結構ですよ。工藤君の名前を騙って蘭さんを此処へ呼び出した人物も気に
                       なりますし…むしろ、僕達と一緒に居たほうが安全かもしれませんしね」
                      「ほんなら、中で蘭ちゃんの話聞こか。俺らの捜査の手がかりになるかもしれ
                       へんしなぁ」
                      「蘭さえ良きゃ、俺は構わねぇけど…そのメール…俺のアドレスだったのか?」
                      「それが…携帯じゃなくてPCメールだったのよね…」



                     園内の喫茶店に落ち着くと、携帯に受信されてきたメールをみんなに見せた。

                      「蘭さん…このメールの工藤君とは、電話では話してないんですよね?」
                      「ん…全部、このメアドに送ってたの。PCから新一が送ってくるなんて無いこ
                       とだし…電話や携帯じゃ都合悪いのかなって思って…」
                      「あのなぁ…俺がンな面倒なことするわけねぇだろ?…携帯で都合悪ぃって
                       思うなら、こっちから連絡するっつーの」
                      「それも…そうよね。それじゃ、これ…誰からなのよ?」
                      「……蘭ちゃんのアドレスを知ってる人物っちゅーことやろ?…この人物が
                       本物やったら…俺らや蘭ちゃんは故意的に此処に集めらたんやろうけど…」
                      「偶然の一致…なんですかね…それとも…」
                      「コイツも名前を騙られてるのかもな」
                      「ねぇ…みんな、このメールの差出人…分かったの?」
                      「あぁ、この文の中に…俺と蘭以外の名前…あンだろ?」
                      「……服部くんと、白馬さん…?」
                      「…バーロォ、何で白馬と服部がオメーにメールすンだよ。他に…見えねぇか?」
                      「……他…に?…」
                      「文章の一番頭、やな。そこ、平仮名にしたら見えるんちゃうか?」
                      「…平仮名ね…えっと……かいとう…きっど……嘘、でしょ?!」
                      「さぁ、な。俺らンとこにもご丁寧に招待状が届いてンだよ。どーゆーつもりか知
                       ンねぇけど、俺らをこの場に集めたかったンだろうな…」
                      「若しくは…僕達が、彼の名前を騙った誰かに集められた、か…いずれにしても、
                       この暗号の場所に時間内に行かなくてはならないんですけどね」
                      「暗号は…まだ、解けてないの?」
                      「えぇ、残念ながら。その前に受けた依頼の調査もしなくてはなりませんしね」
                      「そっか…何か依頼を受けてるって言ってたものね」
                      「どや、蘭ちゃんも一緒に来ーへんか?依頼ゆうても…な?あるアトラクションに
                       ちょこーっと乗るだけやし」
                      「いや、しかし…蘭さんには少し手強いのでは…」
                      「ちょっ…ちょっと、待って…?手強い…っていうか、大変ならあたし待ってるし…」
                      「何言ってンだよ、大丈夫だって、な?白馬」
                      「そう…ですね。我々も一緒なんですし…ね?」
                      「ちゅうーわけで、蘭ちゃんも一緒に乗ろうや」
                      「…何か、すっごく嫌な予感するんだけど…気の所為?」

                     3人の笑顔に裏めいたものを感じてならないあたしは…警戒しつつ、聞いてみる。

                      「何、俺達が信じられないわけ?」
                      「そーゆーわけじゃ…」
                      「久々に会うたんやし…ここは、何も聞かんと付き合うてや、な?」
                      「……うん…」
                      「ンじゃ、決まり…な?蘭も乗るっつーことで」
                      「ちょっと待ってよ?!…あたし、まだ乗るって決めたわけじゃ…ホラ、依頼の
                       内容聞いてみないと…」
                      「へぇ…、俺からの誘い…蘭は断るンだ?」

                     満面の笑みであたしを見る新一…。
                     こうやって言われちゃうと、もぉ…ダメ。確実に逃げられなくなる…。

                      「…うっ…わ、わかったわよ……どーせ、拒否権なんて無いんでしょ…?」
                      「よく分かってンじゃん」
                      「よっしゃ、ほな…行こか」
                      「ですね」

                     足取りの重いあたしは、みんなから遅れてついて行く。

                      「往生際悪すぎ、大丈夫だから来いって」

                     新一に手を引かれて、その場所へ行ってみるとジェットコースターの前まで来た。
                     今、話題になってる
                     『ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド』…でも、ここで依頼なんて一体どんな内容なん
                     だろ…。 

                      「ねぇ、この場所で一体どんな依頼なの…?」
                      「このジェットコースターはな、乗ってる間中自分でセレクトした音楽が流れてる
                       ちゅうもんなんやけど……この依頼人は、何度か乗ってるのに毎回聞いてま
                       うらしいなぁ…この世の声とちゃうもんを…」
                      「えっ…ちょっと、あたし…無理っ、絶対無理よっ!」
                      「…何を今更、逃れられねぇってのに…」
                      「まぁ、依頼人の聞き間違いでしょう。この世にそんなものが存在するわけあり
                       ませんからね。案外楽しめるかもしれませんし……人間、諦めが肝心とも言
                       うでしょう?」
                      「んもぉ…みんなして……責任、とってよね」
                      「ははっ、任しとけ」

                     約3分ほど…かな。
                     乗り終えて降りてきたあたし達は、ベンチで少し休むことにしたんだけど…どうも、
                     3人の表情が違って見える。

                      「何か…あったの?」
                      「蘭は、曲の合間に何も聞こえてなかったのか?」
                      「えっ……みんなには、何か聞こえてたの?」
                      「えぇ、どうやら…僕達は故意的に此処へ集められたようだ。恐らく、蘭さんも…
                       ですが、不思議ですね。蘭さんには、何も聞こえてなかった…というのが…」
                      「あっ…あたしは、聞いてる余裕なんて無かったし…ホラ、騒いでて終わっちゃ
                       ったもの」
                      「確かに…蘭のところからは悲鳴しか聞こえてこなかったもんな?」
                      「……そーゆーとこ、聞いてなくていいのに…あっ…でも、そういえば……」

                     ホントは…聞き覚えのある声が、ひと言だけ聞こえてきた。

                      『大丈夫ですよ、お嬢さん…もう、少しで終わりですから』

                     確か…そんなような言葉が…そのお陰で、一瞬だけど…落ち着けた時間が
                     あったのよね。

                      「…そういえば、何だよ?」
                      「あっ、何でもないの。やっぱり、聞き違いっていうか…気の所為だもん」
                      「…なぁんか、隠してへんか?…探偵の目は誤魔化されへんで?」
                      「もぉ…隠してないってば…ホラ、それより…みんなには何か聞こえてたんで
                       しょ…?やっぱり…予告状に…関係ありそう?」
                      「大有り…やな」
                      「っと…そろそろ、行った方が良いンじゃねぇか?アイツが待ってる場所によ」
                      「そうですね…そろそろ、場所も取れるでしょうし…彼が、何を企んでるのか…」

                     みんなには何が聞こえてたのか…教えてはくれなかったんだけど…あたしを
                     此処へ呼び出したメールの人も、あのジェットコースターから聞こえてた声も…
                     多分、本物のキッド…だとしたら、あたしは何でここに呼ばれたんだろ……。

                     3人があたしを連れてきた場所は、『ピーターパン』が開演される場所。
                     ラグーンエリアな為、寒い場所なんだけど…場所を取っておかないとゆっくり見る
                     ことも出来ない場所らしくて、白馬さんと服部くんの計らいで、特等席を取って…
                     時間までを過ごすことになった。
                     流石に、寒くて…服部くんと白馬さんが飲み物を買いに行ってる間残されたあたし
                     と新一。
                     最初は普通に何気ない会話をしてたんだけど……新一のひと言に、動揺が走る。

                      「…さっきの、コースター…ホントは何が聞こえてたんだよ?」
                      「えっ…何でもないわよ。新一こそ…何が聞こえてたのよ?」
                      「俺が言ったら言うンだな?」
                      「……えっ、…き、聞こえてないってば…」
                      「…言うンだよな?」

                     ホント、鋭いんだから…。

                     ここで分かった事実。

                     新一達が渡された暗号に書かれてた内容は…

 親愛なる名探偵諸君へ

  西のハリウッド
  子ども達が集う、水辺の聖地において
  妖精に魅入られし少年が、天空へ飛び立つ刻
  麗しき一輪の生花を頂きに参上する

                    怪盗キッド 

                    …そう、3人を呼び出した予告状の主も怪盗キッドだったこと。
                    その前に…3人に来た依頼主…。その人物もキッドじゃないかってことが浮上して
                    きてたみたい。
                    3人がジェットコースターに乗ったとき、聞こえてきた声はキッドの声。

                     『招待状の場所にてお待ちしておりますよ、名探偵』

                     「それじゃ…依頼をしてきたのもキッドの仕業?…3人を此処へ呼ぶための?」
                     「あぁ…ヤツの意図はわかんねぇけど…このUSJまで誘いだし、あのコースター
                      に乗せて、この暗号の場所へ連れてくる…それが、ヤツの狙い…っつーことだ
                      ろ?」
                     「じゃ…じゃあ、この麗しき一輪の生花…って?キッドは何を盗もうとしてるのよ?」
                     「…蘭さん、のことかもしれませんね」

                    飲み物を片手に後ろから聞こえてくる白馬さんの声。

                     「蘭…も、花の一種やしなぁ…。これが、本気で盗むか遊び半分かは分からへ
                      んけど …その可能性はあるんちゃうか?蘭ちゃんを此処へおびき出してるあ
                      たり怪しいやろ?」
                     「今回のこの暗号…僕達を遊び半分で動かしてるようにしか思えませんからねぇ…」
                     「ンじゃ…一体、アイツの意図は…」
                     「…さぁ、このショーを見たところで…皆無かもしれませんよ?」
                     「ま…ショーを見たら分かるやろ…」

                    そんなことを言いながら、始まったショーに目を向ける。
                    キッドの予告状では、『妖精に魅入られし少年が、天空へ飛び立つ刻』…となってる。
                    だとすると……ピーターパンが、上空へ飛ぶとき…よね。

                    花火の音とともに、上空へ飛び立つピーターパン…。

                    何の変化も無く、ショーは続けられている。
                    ふと、ピーターパンより更に上を飛ぶ白い陰が目に付いた。

                     「ねっ、新一…あれ!」
                     「…キッド…だな。…けど、何も起こってないよな…?」
                     「えぇ、どうやら…彼のお遊びに付き合わされたようですね…」
                     「…いや、そうでもないみたいやで?」

                    あたしのパーカーのフードの中に入ってる、一輪の薔薇とメッセージの書かれた
                    カードを取り出す服部くん。

 親愛なる名探偵諸君へ

  ささやかな休日は楽しめたかな?
  私を追いかけるのも結構だが…時には休息も
  必要ですよ?麗しき生花を枯らす事の無い様
  素敵な休日もね。

  次回は…勝負の舞台でお待ちしております

  PS.麗しきお嬢さんへ
    次は、名探偵の目の届かない場所で
    お会いしましょう

                    怪盗キッド 

                    「…キッドの目的…って、みんなに此処で遊ばせて休日を楽しませる…ってこと
                     だったの?」
                    「そのようですね…。まったく、何を考えているのやら…」
                    「同感…。逆に振り回された感があンのは気の所為か?」
                    「…ま、事件片付いたんや…良かったんちゃうか?」

                   気の抜けたような3人の表情に…少しだけ、笑顔があったのは確かだったみたい。
                   キッドのお陰…だったのかもね。

 

                      +++++ おまけ +++++


                   園を出てから…のこと。
                   何かを夢中で話し込んでる新一と白馬さんを振り返った瞬間だった。
                   突然強い力で腕を組まれ引っ張られたかと思うと…横でにっこり笑っている服部くん。

                    「さ、久々に会うたんやし…ドライブ行こうや」
                    「え、で…でも、新一と白馬さんが…」
                    「白馬と工藤には先月会うたんやろ?…俺だけ、8ヶ月のブランクがあるんやで?」
                    「えっと…あ、ホラ…じゃ、また…違う日に……」

                   服部くんのニヤリと笑う表情に、思わず振り返って2人を見るあたし。
                   相変らず、何か夢中で話してる。

                    「蘭ちゃん…諦めぇや……工藤は助けに来ぃへんで?」

                   何か…こう、色んな意味で実感篭った言葉に…心臓を打ち抜かれた…そんな気分。

                                          

                                                               Fin...

 

 


                    +++++ あとがき +++++

                    USJオフを…ちょこっと弄って小説にしてみました。
                    今回の出演者は…、あっきー・万ちゃん・あっ君です。
                    誰がどれか…は、もぉ…分かるよね(笑)

                    殆ど…本人達が話してた言葉を使ってるつもり…です(笑)

                    みんな、また遊ぼうね♪

 

                                                  蘭*

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