The Lock up

                                              by,ruka

 

      「あれ?・・・・確かここであってたハズなのに・・・・」

    友達に渡された地図をたよりに、とあるお店まで行く途中のことだった。

    あたしは、どこで道を間違えたのかわからず、同じところをグルグル迷って道を歩いていた。

    ちょーど裏路地に入ったその時。

      「ん?あれは工藤の女・・・・ヤツをおびき寄せるにはいいエサかもしれんな・・・・」

    背後から近づいてくる気配に気づかず、振り向くと目の前には黒ずくめの男が立っていた。

      「あ・・・・あなたは・・・・」

    ニヤッと笑うその男の手にはナイフが握られてる。

      「工藤の女だな?一緒に来てもらおうか」

    ナイフを向けられたその瞬間。

 

    “パシッ”

 

    男の手から落ちるナイフと床に刺さったトランプのカード。

      「彼女には指1本触れさせないぜ?」

      「お前はっ・・・・」

      「・・・・しん・・・・いち・・・・?」

    暗闇に浮かぶシルエットから聞こえる声は新一の声・・・・ゆっくりこっちに向って歩いてくる。

    銃を男に向けながら新一はあたしの手を取ると、庇うようにあたしの前に立った。

      「ふっ、ここで会えるとはな・・・・お前をおびき出す手間がはぶけたぜ・・・・」

      「残念ですが、それは本人と会えてからにしていただきたい」

      「何?」

      「俺は、アンタが探してる『工藤新一』じゃないぜ?」

 

    そう言った瞬間、新一の姿は一瞬にして怪盗キッドの姿に変わり、あたしの体も宙に浮いていた。

      「お前は・・・・怪盗キッド・・・・」

      「ほぉ、名前を覚えていただけてたとはあり難い。彼女は返してもらいますよ?では」

 

 

    ―とある喫茶店―

      「・・・・さっきのあの男の人・・・・新一と何か関係があるの・・・・?」

      「あぁ、新一が身を隠さなきゃいけなくなった原因の一つだからな」

      「・・・・何故、快斗くんがあの場に・・・・?」

      「ヤツらが持ってる、ある物をキッドが狙ってたから・・・・かな。とにかく、蘭ちゃんはこの付近から離れた方がいい」

      「でも・・・・」

      「さっきので分かったろ?ヤツらは新一だけじゃない、蘭ちゃんまで狙ってんだぜ?それに・・・・俺のことも知ってる

       ってことは、俺と一緒にいるのも危険ってことだ」

      「でもっ・・・・あの人達を倒さないと・・・・また、新一や快斗くんが狙われちゃうんでしょ?」

      「俺は大丈夫さ。ヤツが見たのは快斗じゃない、怪盗キッドだからな。怪盗キッドはヤツ等に捕まったりしないよ」

    “pipipi”

    あたし達の会話をさえぎるように携帯が鳴る。

      「ホラ、電話。新一からだろ?」

      「あ・・・・うん・・・・」

    快斗くんに促されて電話を取ると、相手は新一だった。

      『蘭か?今何処に居るんだ?』

      「えっ・・・・い、今?」

    一瞬快斗くんを見ると、“言うな”と合図を送っている。

      「今・・・・友達と会ってて・・・・新一は?」

      『蘭の家の近くなんだけど、待ってても暫くは戻ってこねぇよな?』

      「あっ・・・・うん、ゴメン」

      『じゃあ、戻ったら連絡くれよな?』

      「うん・・・・あっ、あのね・・・・黒・・・・・・」

      『ん?何だ?』

      「あっ・・・・いいの、何でもないわ。電話するね」

      『あっ、おいっ・・・・・・』

    何か言いかけてる新一の声を聞かずあたしは携帯のスイッチを切った。

      「蘭ちゃんは、新一の側に居た方が今は良さそうだな・・・・。さっきの事も言わない方がいい」

      「・・・・お願い・・・・快斗くんと一緒に居させて?あたしがあの人達に捕まっても・・・・新一の連絡先を

       教えなかったら新一が捕まることはないでしょ・・・・?」

      「ヤツ等はそんなに甘くないぜ?」

      「ん・・・・わかってる・・・・でも、快斗くんだって・・・・あの人達のこと探るつもりなんでしょ・・・・?あたしまで

       狙われてるなら尚更・・・・このまま帰りたくないのよ」

      「しょーがないお嬢さんだな」

    苦笑いをしつつもあたしの要求に答えてくれた快斗くんとさっきの裏路地まで戻ってみた。

 

    もう、あたりは真っ暗で、人の気配も感じなかったんだけど・・・・。

    奥まで足を進めた時だった。

      「快斗くん・・・・?」

    あたしの前を歩く快斗くんの足が止まる。

      「蘭ちゃん、今来た道をそのまま戻るんだ」

    あたしの耳元でそう言う快斗くん。

      「でっ・・・・でも・・・・」

      「いいからっ、早くっ!逃げるんだっ!」

    背中を押されて走り出したんだけど・・・・頭に強い衝撃があり・・・・そのままあたしは気を失った。

 

      「・・・・んっ・・・・」

    目を覚ましたあたしは暫くぼぉーっと周りの様子を見つめてた。

      「・・・・ここ・・・・は・・・・」

      「お目覚めのようですぜ?アニキ」

    檻の向こう側に居る男の人が2人、起き上がったあたしを見ている。

    あたし、捕まって檻の中に居るんだ・・・・同じ檻の中を見渡すと、男の人が横たわってる。

      「かっ・・・・快斗くん・・・・?」

      「・・・・うっ・・・・蘭ちゃん・・・・逃げろって言ったのに・・・・」

    頭を抑てゆっくり起き上がりながらもあたしに微笑みかける快斗くん。

      「そんなこと・・・・できるわけないじゃないっ・・・・」

      「毛利蘭、工藤新一の居場所を知ってるな?」

      「言わないと、工藤より先にあの世に行くことになるぜ?」

    不敵な笑みを浮べてる男達。

      「まぁ、いいさ。ゆっくり調べさせてもらうよ」

    男が行ってしまうと、快斗くんの側に駆け寄る。

      「快斗くんの正体・・・・バレちゃったのかな・・・・」

      「さぁな、どっちにしても・・・・蘭ちゃんは新一の居場所さえ教えたら出ることは出来るだろ?」

      「何言ってるのよっ!?そんなことしたら快斗くんは・・・・」

      「俺は大丈夫だって。神出鬼没の怪盗キッドだぜ?」

      「そのキッドがこうやって檻の中に入っちゃってるんじゃない・・・・どうやって出るっていうのよ・・・・?」

      「まぁ、俺に任せろって」

    そう言ってにっこり笑う快斗くんの手元に居た一羽の鳩が檻から出て行った。

 

    暫くすると、さっきの鳩が情報を持って戻って来る。

      「何っ?!自白剤・・・・?それはマズイな・・・・」

      「快斗くん・・・・?自白剤・・・・って・・・・?」

      「イヤ、蘭ちゃんに飲ませようとしてるらしいんだよ」

      「まさか・・・・新一の居場所を探るためにっ?!」

      「あぁ・・・・」

      「快斗くん・・・・」

      「大丈夫だよ、俺に任せとけって」

    そう言うと、あたしの姿を快斗くんに・・・・そして、快斗くんがあたしに変装した。

      「蘭ちゃんは、黙って俺のフリしてればいいから」

      「でも、快斗くん・・・・あたしの変わりに自白剤飲まされちゃったら、あの人達にもバレちゃうかもしれない

       のよっ?!」

      「大丈夫だよ。・・・・っと、ヤツ等が来るぜ?・・・・しっかり俺になりきってくれよな?」

      「うん・・・・」

    黒ずくめの男が、あたしに変装した快斗くんを捕まえると試験管に入った6色くらいの妖しげな薬を出した。

      「・・・・工藤の居場所を言え」

      「しっ・・・・知らないわよっ」

    凄い・・・・快斗くんの変装、声まであたしにそっくり・・・・。

    ビーカーに入ったカルピスみたいな色の薬の中に、試験管の中の薬を次々入れていく男達。

    抵抗する快斗くんに、無理矢理その薬を飲ませると男達は、なかなかホントのことを言わない快斗くんに

    イライラしながらも、嘘の情報を手に入れ満足そうに戻っていった。

      「ゴホッゴホッ・・・・」

      「かっ・・・・快斗くんっ!?」

      「・・・・だっ・・・・大丈夫だ。・・・・微妙な味が残ってるだけで・・・・」

      「体に何かおかしいところはないの・・・・?ホントに大丈夫・・・・?」

      「あぁ・・・・大丈夫だよ。それより・・・・ここから、出ようぜ?」

      「出るって・・・・どうやって・・・・?」

    快斗くんの手に握られてる1本の鍵。

    快斗くん・・・・さっきのあの状態から鍵を抜き取ったんだ・・・・。

    牢屋を抜け出して外に出ると、海に面した岬のような場所が広がってる。

      「海から逃げるしかねぇってことかよ・・・・」

    後ろから、追いかけてくる黒ずくめの男達。

      「残念だったな、そっちに逃げ道はねぇよ」

    そう言いながら咥えていたタバコを投げると、勢い良く枯草が燃え出す。

      「か・・・・快斗くん・・・・」

    炎の向こうで冷たく笑う男達。

      「あばよ」

 

    “ズキュン”

 

    その声とともに、拳銃が発射される音はしたんだけど・・・・幸い、その銃弾には当らず助かった・・・・けど、

    この火の海・・・・岬の先は断崖絶壁だし・・・・。

    風と炎はあたし達に向ってどんどん迫ってくる。

      「一応、命だけは助かったってことかもな」

    にっこり笑って、あたしの手を引く快斗くん。

      「俺から絶対離れんなよ?」

      「あっ・・・・うん」

 

    “パチッ”

 

    快斗くんが指を鳴らして怪盗キッドに変装した瞬間・・・・あたし達の立ってる場所と反対側の

    これから逃げようとしてる岬の突端までもが燃え出した。

    あたしの手を引きながら、今燃え出して消えていく地面の上に足を踏み入れる。

      「そっか・・・・一度燃えちゃったら、ここに火が燃え移ることはないのよね・・・・」

      「その通り。これなら後ろから来る火が俺たちのところまでくることはないだろ?」

      「けど・・・・快斗くんのマジックってホント凄いのね?・・・・火まで出ちゃうなんて・・・・火種まで持ってるの?」

      「イヤ・・・・」

    何か、不思議そうに自分の手を見つめてる快斗くん。

    あたしを支えながらハングライダーで飛び立ってからも、何か府に落ちない様子だった。

      「・・・・どうしたの?さっきから、考え込んでるみたいだけど・・・・」

      「イヤ・・・・おかしいんだよな・・・・俺、火種なんて持ってなかったんだけど、あの時、火があやつれたろ?何が

       起こったのかわかんなくてさ・・・・」

 

    その後、何度か指を鳴らしてみたんだけど、火が出てくることはなかった。

    あの、薬のせい・・・・?だとしたら、何の薬だったのかしら・・・・ね?

 

                                                             おしまい。

 


     言い訳でーっす(笑)

     かなり苦しいかな・・・・とは思いつつも監獄に入ってしまったキッドを書きたくてつい(笑)

     そして、飲まされた怪しげな飲み物。

     一応、キーワードは抑えた・・・・よね??

     最後に登場した、指パッチン変身後の火。

     最初は使うつもりなかったんですけどね??ちょーど、ブームだったもので予定変更(笑)

     ・・・・もうちょっと、文章力があったらよかったのになぁ・・・・とも思ったんだけどね(苦笑)

 

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