出逢い
by,ruka
ある日のこと。
「ただいまぁ」
「おぅ」
学校から帰ってきたあたしは、事務所から聞こえるお父さんの声で部屋には行かず事務所に入った。
珍しくデスクで何かを真剣に読んでるお父さん。
「何か依頼でもあったの?」
「あぁ、光希太郎 26歳・・・・ただの人探しなんだがなぁ・・・・」
「何か問題でもあるの?」
「いや・・・・名探偵の毛利小五郎がだぞ?人探しっていうのは・・・・」
「何よ?滅多に仕事してないんだから真剣に探してあげればいいじゃない?」
そー言いながら、ソファに座るとソファの隅に落ちていた定期入れに気づいた。
「お父さん・・・・その依頼の人・・・・この近所よね?あたしこの定期届けてくるねっ?」
「あ?・・・・おぅ」
あたしは制服のまま定期入れに入ってた免許の住所に行ってみることにした。
何となくどっかで聞いたことあるような名前・・・・免許の写真にも何となく見覚えがあるような気がして・・・・。
「えっと・・・・住所は・・・・帝丹高校の裏側じゃない」
新一の家の前を通り抜け、住所の場所まで向う途中。
「蘭、何処行くんだ?」
「あっ・・・・お父さんの依頼人に忘れ物渡しに行くのよ、ちょーどこの辺りみたいだし・・・・」
「へぇ・・・・この辺だったら、んなに急ぐこともねぇだろ?・・・・おめぇ制服のままじゃん、重要な相手なのか?」
「えっ?・・・・あ・・・・まぁね、ホラ定期とか免許とか入ってるし・・・・早いほうがいいじゃない?」
チラッと見えた定期入れに不満そうな新一の顔。
「相手は男ってわけね」
「もぉ・・・・依頼者よ、依頼者(苦笑)・・・・じゃ、行って来るねっ」
新一に、相手の名前と顔が気になったから届けるなんて言ったら、なぁに言われちゃうかわかんないもんね。
何か言いたげな新一に言い訳してあたしは先を急いだ。
「えっと・・・・光希・・・・光希・・・・あっ、ここね」
表札を確認して呼び鈴を鳴らす。
「はい・・・・」
ドアを開けた男の人は免許の顔の人だった。
「あっ・・・・あの、あたし毛利蘭っていいます。光希太郎さんですよね?・・・・事務所に忘れ物があったので・・・・」
定期入れを差し出すと、ちょっと警戒気味だった男の人の顔は笑顔に変わった。
「毛利探偵の娘さん・・・・ですか?」
「えぇ、早く届けた方がいいかな・・・・って思って・・・・」
「わざわざ、ありがとうございます。よろしければどうぞ?」
「えっ・・・・あ・・・・はい」
男の人の家に入るなんて、新一の所以外なかったけど・・・・何となく気になって話してみることにした。
「すみません、何か・・・・上がり込んじゃって・・・・」
「いや、いいよ。俺も1人で退屈してた所だったし」
「1人暮らしなんですか?」
「ん、今はね」
コーヒーをテーブルに置くと光希さんもあたしの前に座った。
「あ、その制服って帝丹のだよな?君もそこの生徒なんだ?」
「あっ、はい・・・・君もってことは・・・・光希さんも?」
「そうだよ。俺は随分前に卒業してるけどな」
「・・・・光希さん・・・・もしかしてこの前の文化祭・・・・来てました?」
「あぁ・・・・確か殺人事件があったんだよな?・・・・そーいやあの時の芝居の姫って・・・・」
「はいっ、あたしだったんです」
「やっぱりそーだったのか。さっき、玄関開けたとき、どっかで見たことあるなー・・・・とは思ったんだけどさ」
あたしが、この人を覚えてた理由・・・・思い出した。
あの文化祭の時、あたしは光希さんを呼び出すアナウンスをしたこと・・・・そこに来た光希さん、あたしの目の前
で彼を呼び出した女性と喧嘩をしてたこと・・・・。
「あの・・・・立ち入ったこと聞いてもいいですか・・・・?」
「何かな?」
「あの文化祭の日・・・・あたし、あなたを呼び出して欲しいって女性に言われて・・・・あの時の女性とは今も
・・・・?」
一瞬彼の表情がくもった。
「君のお父さんへ頼んだ依頼も・・・・その女性のことさ」
「じゃ・・・・じゃあ・・・・人探しって・・・・」
「ん、あの後ちょっともめちゃってさ・・・・それ以来、彼女何処に行ったのかもわからないままで・・・・名探偵
さんに依頼をって思ったんだけど・・・・」
「あの・・・・もし、あたしでよかったら力になりますよ?ここで会えたのもきっと何かの縁だと思うし・・・・それに
あなたの名前聞いて、どっかで会ったことあるんじゃないか・・・・って思って、今日来てみたんだし・・・・」
「いや、いいよ・・・・実は毛利さんにも依頼をキャンセルしようかって帰りながら思ってたんだよね」
「そんな・・・・だって、彼女のこと心配じゃないんですか?」
「何ていうのかな・・・・君のおかげで、決心ついたっていうか・・・・」
「でも・・・・会いたいから探そうって思ったんでしょ?」
「まぁね・・・・けど、そろそろ先を見ないと・・・・な?・・・・あ、そうだ。それじゃ・・・・一つ頼んでもいいかな?」
「えぇ、もちろん」
「毛利さんがもし、彼女見つけることできたら・・・・彼女に『今までありがとうな』って伝えてもらえるかな?」
「それだけで・・・・いいんですか?彼女と会わないんですか?」
「あぁ、それだけでいいんだ」
どことなく寂しげな表情をするのに・・・・そー言って微笑む光希さん。
「あの・・・・お父さんじゃなくても、あたしでよかったら言ってくださいね?力になりますから」
「ありがとな。けど・・・・俺に関わってたら、君の彼が妬くんじゃないのかな?」
「えっ・・・・あたしには彼なんて・・・・」
「あの、芝居の時のナイトは君の彼だろ?(笑)・・・・俺の座ってた席の近くだったから、聞こえたけどな?
『あとで話がある』ってさ」
「えっ・・・・も・・・・もぉ・・・・」
結局、依頼の彼女は杯土町で見つけることができて、彼の希望どおり会わずに伝言だけを伝えることが出来た
んだけど・・・・、これをきっかけに新一以外の男性でちょっと気になる存在になった人だった。
もちろん、新一には秘密だけど・・・・ね(^^)
END