The Saviour

                                                 by,ruka

―米花駅前・電話をしながら歩いてる蘭―

  「もぉ・・・・結局言いわけなんでしょっ?・・・・いいわよ、好きにしたらいいじゃないっ!」

  『ちょ・・ちょっとまてって。蘭!?』

  「ずっと、その厄介な事件に関わってたらいいでしょっ!?」

  『あっ、おぃ!』

新一が何か言ってるのも気にとめず、あたしは電話を切った。

これが最後の会話になるとも知らずに・・・・。

 

その日の夕方、新一と喧嘩したイライラもあって家にも帰らずフラフラと街を歩いていた。

お父さんも厄介な事件とかで地方に行ってるし、せっかく新一と一緒にいられるって思ってた

のに・・・・。

気がつくとあたしは人気のない路地裏の倉庫街に来ていた。

  「い・・・・嫌だ、帰らなきゃ。何でこんな所まで来ちゃったんだろ・・・・」

引き返そうとしたその瞬間、組織かなんかの争いなのか・・・・銃の連射される音で振り返った。

数人の男の人と暗闇を走る光の矢の筋・・・・。

その場から慌てて逃げたんだけど、どうやらあたしは流れ弾にかすり、意識を失ってしまったら

しかった。

 

目が覚めると、そこはホテルの一室。

  「っん・・・・」

  「気がつきましたか?お嬢さん」

  「あなたは・・・・誰?」

  「もう、お忘れですか・・・・」

この声・・・・姿、なぁんとなく覚えてる気がするんだけど、わからない。

  「ごめんなさい。思い出せないの・・・・」

  「記憶喪失・・・・か?お嬢さん名前は?」

  「・・・・毛利・・・・蘭・・・・よ?」

  「じゃ・・・・コイツの名前はわかるのかな?」

目の前に出された一枚の写真。

  「この人・・・・あたしと関係のある人・・・・なんですか?」

  「東の高校生名探偵、工藤新一・・・・で思い出せないかな?」

  「えぇ、思い出せないわ・・・・でも、探偵さんなら・・・・お父さんも知ってるのかしら・・・・」

  “ん?・・・・忘れてるのは工藤のことだけなのか?”

  「じゃあ・・・・怪盗キッド・・・・に聞き覚えは?」

  「あ・・・・なんとなく・・・・名前は・・・・」

  「それは、光栄だな」

そう言って、にっこり微笑む彼。

  「それじゃ・・・・あなたが怪盗キッド・・・・?」

その言葉に頷くと、あたしが今ここにいるわけを話してくれた。

あたしは・・・・あの銃撃戦を目撃してしまい、仲間の一人に終われてたみたいで、その人が

撃った拳銃が肩をかすめて倒れそのまま意識を失ってしまったところをキッドに助けられて

このホテルで手当てをしてくれて今に至ったらしい。

  「さて・・・・私は貴女を帰したくないのですがどうしますか?・・・・一部の記憶はなくなって

   るようだが怪我はすっかり治っている。もう、動いても大丈夫でしょう」

  「でも・・・・あたしがここに居たらあなたに迷惑がかかってしまうんじゃ・・・・?・・・・あなたは

   怪盗さん・・・・でしょ?」

  「いや、迷惑どころか・・・・貴女を側に置いておきたいくらいさ(微笑)」

あたしの鼓動はどんどん早くなっていく。

多分、今までこんなこと言われたことなかったんだろうな・・・・。

  「そ・・・・そんな・・・・・。でも・・・・あたしも、もっと話していたいかな」

“pipipi・・・・”

携帯の着信が2人の会話をさえぎった。

  「・・・・もしもし・・・・」

  『蘭、オレだよ・・・・。まだ怒ってんのか?・・・・この間は悪かったよ』

一方的に話し出す男の人の声。

キッドにも似た声で・・・・でもそんなに落ち着いて話す感じではなかった。

  「あ・・・・あの・・・・」

  『蘭・・・・・?蘭だよな?』

  「あ・・・・はい」

  『ンだよ・・・・何かあったのか!?』

携帯から聞こえてくる相手との会話に不敵な笑みをこぼすキッド。

この人達の間には一体何があるっていうの・・・・?

  『・・・・蘭?』

  「あっ・・・・ごめんなさい、また・・・・かけ直すね?」

そーいうと思わず一方的に電話を切ってしまった。

この人が・・・・工藤新一・・・・。

  「あの・・・・あたしと工藤新一って人、いったいどんな関係だったんですか?」

  「関係ねぇ・・・・。恋人同士なのか、それ以前なのか・・・・。どちらにしてもお互い大切

   な人だったんじゃないのかな?」

  「あたし・・・・そんな人を忘れてるなんて・・・・」

  「戻りますか?・・・・思い出せるかもしれませんよ?」

その一言に、なんか心臓がチクッとした。

何か、ここから離れるのが嫌・・・・っていうか・・・・戻りたくないっていうか・・・・。

  「・・・・ここにいちゃ・・・・ダメですか?」

  「それは・・・・俺を選んでくれたってことなのかな?(微笑)」

  「えっ・・・(///)」

分からない、多分あたしはキッドのことを全て覚えてるわけじゃない。

でも・・・・でも、離れたくなかった。

 

  

 

―3日後―

あたしは工藤新一以外全てのことを思い出し、我が家に帰ってきた。

そういえば、あれから電話・・・・かけなおしてなかったんだっけ・・・・。

ぼぉーっと考えながら歩いていると、門の前の人影に気づいた。

  「よぉ、蘭・・・・」

  「あっ・・・・電話・・・・ごめんね」

何とか、その場を取り繕うと・・・・会話を持ってくる。

 

―近くの公園―

  「ずっと、家にいなかったのか?」

  「ん・・・・ちょっと・・・・出かけててね」

沈黙に耐えられず立ち上がろうとした瞬間。

  「ちょっと待てよ、何があった?誤魔化そうとしても無駄だぜ?」

  「な・・・・何言ってるのよ・・・・誤魔化してなんか・・・・」

  「それ、俺の目見て言えんのか?」

彼の鋭い視線にあたしは何も言えず俯いてしまう。

  「・・・・蘭、どーしちまったんだよ・・・・?この、数日の間に何が起こってたんだよ?」

彼があたしを掴む手に力が入る。

その瞬間・・・・。

 

“パシッ”

トランプのカードが彼の足元に刺さる。

  「・・・・そこまでだな・・・・」

  「怪盗キッド・・・・。何でお前がここに居ンだよ?」

  「それ以上踏み込むのは俺の許可がいるってことさ」

不敵な笑みをこぼすキッド。

  「ちょっと、まてよ・・・・何で俺がおめぇに許可貰わなきゃなんねぇんだ?蘭は、俺の・・・・」

  「俺の?・・・・それはこの数日前までの話だろ?」

  「この数日間の間にお前のものになった・・・・とでも言いたそうじゃねぇか」

  「ふっ・・・・それは・・・・どうかな?」

  「・・・・てめぇ、蘭になにしやがった・・・・」

  「失礼だな、私は何もしていませんよ?蘭さんは、何処にいるのかも分からない探偵より、

   怪盗を選んだってことなんじゃ?」

  「んだとっ!?」

  「やっ・・・・やめてよっ!キッドは何もしてないわっ・・・・あたしを助けてくれたんだもんっ・・・・」

  「それで心変わりした・・・・とでも言いてぇのかよ?!」

  「違うの・・・・・違うのよ、新一・・・・」

  「納得いかなぇな・・・・」

  「納得いかずとも・・・・今日のところは預かっておきますよ?私の大切な宝石ですから(微笑)」

悔しそうにも悲しそうにも見える新一の表情に殆ど思い出しかけていたあたしの記憶で胸が痛か

ったけど、あたしはキッドの白いマントの中に抱かれ・・・・鳩につつまれながらただ聞こえてくる

新一の声を聞いていた・・・・。

  

  「らーーーーーーーーーん!」

         

と・・・。

 

                                                              END


途中のイラストは小説に合わせてキッド様が描いてくれました。
キッドと蘭ちゃんが微笑ましく見えるのは何故?(笑)ありがとーっ♪

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